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退会

 3年半通ったスポーツジムを退会した。

 もともと、スタジオレッスンは滅多に利用しない。
 外を走ることが多くなってからは、週に一度+αの筋トレが中心の利用になっていた。
 あいさつを交わす人が数名いる程度で、特別、人付き合いもない。

 よく考えて、十分納得して出した結論なのだが、いざとなると寂しいものである。

    ☆    ☆    ☆

 それまでは別人だった。

 夫婦とも残業の多い業種であり、揃って食べる夕飯は深夜に及ぶことも珍しくなかった。
 夜中にラーメン。さらに、ビデオを見ながらおやつを食べる。そんな日々が続いた。

 酒こそ飲まないものの、喫煙習慣は抜けず、運動は全くしない。
 まさに、生活習慣病へまっしぐらであった。

 そんな生活に、自分でも嫌気がさしていたのだろうか。
 ある日、妻と共にスポーツジムの戸をたたいたのである。

 ジムへの入会は、大きな転機の一つであった。

 今は、嫌煙者であり、和食中心の質素な食事を好むランナー。トレーニングをすることが当たり前の日常になっている。

 人は、かくも変わるものなのである。
 そのきっかけを与えてくれたという点において、ジムの存在は思い入れが強いのである。

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一カ月

 あれから一カ月。

 妻が緊急入院。
 すぐに双子が誕生。
 妻と野々心の退院。そして菜々心の退院。

 仕事帰り、妻の実家で数時間の育児を堪能してから帰宅する毎日にも馴染んできた。

 早いようでもあり、だが人生でこれ程長い一月を過ごしたことはないようにも思う。

 トレーニング量は激減している。
 忙しい毎日。梅雨で雨が多い。さらに体調を崩したり・・・と言い訳が目白押しなのである。と言い訳してみるのである。

 動いていないのに、妻の実家ではつい食べ過ぎてしまう。
 いまのところ大幅な体重増加はないが、そろそろ危険領域である。

 子供と一緒に私まで成長しないよう、一月の節目にて新たに気を引き締めよう。

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そして一人へ

 家と車の間を四往復して、やっと荷物をすべて積むことができた。
 大移動だ。

 初めてのチャイルドシート。
 野々心は火がついたように泣くが、こればかりは我慢してもらうしかない。
 菜々心は少し不満げに声をあげたが、すぐに涼しい顔に変わった。

 エンジンをかけ、妻の実家に向かって走りだす。

 二人とも静かになった。
 揺れが気持ちいいのか、シートの窮屈さに慣れたのか、すやすやと眠り出す。

 あれやこれやと動いているうちに、あっという間に夜になっていた。
 もう帰らなければならない。

 今夜からしばらくは、一人暮らしである。
 実家は職場と自宅の途中にある。だから、毎日会いに行ける。でもやっぱり寂しいのである。

 さらりと帰るつもりだったが、いざとなると涙があふれてきた。
 余計に悲しくなって、涙が頬を伝うほどになっていた。前は全く見えていなかったが、不思議とどこにもぶつかることなく車までたどり着いた。

 放心状態であったが、運転に意識を集中しようと努力しているうちに、なんとか無事自宅へたどり着いたのである。

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三人から四人へ

 野々心を抱いて病院に向かう。
 菜々心が無事退院するのである。

 ドレスに着替えた菜々心と一緒に、ナースステーションにごあいさつ。

 うまい具合に、双子を取り上げていただいた助産師さんが二人揃っておられたので、一緒に写真撮影。
 これもまたいい記念。

 双子が揃って自宅に帰ってきた。
 おそろいの服を着て、並んで寝る双子の姿を、ようやく見ることができたのである。

 かわいい。
 夫婦ではしゃぎながら、写真を撮った。

 今夜は、四人並んで眠る。

 泣き声の合唱に何度となく起こされはしたものの、至福の一夜を過ごしたのである。

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二人から三人へ

 妻と野々心は無事退院許可がでた。
 菜々心はやはり退院が延びる。

 残念だが仕方がない。
 菜々心。しばらく寂しいけれど、病院でしっかり育つんだよ。
 順調なら4日後の土曜日には退院できるのだから。

 ともかく家族三人での生活が始まったのである。

 妻の実家でしばらくお世話になる予定であったが、菜々心の退院までは自宅で過ごす。
 病院は自宅の目の前。
 ここからなら、毎日菜々心の様子を見に行くことができるのだから。

 その日は、野々心を挟んで、三人並んで眠った。
 今まで、妻と二人で歩んできた人生を三人で、そして四人で歩んで行くのである。

 なんとも不思議なものである。

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メモリアルベア

 野々心と菜々心が誕生した記念に、「メモリアルベア」 を注文していた。
 生まれたときの、身長と体重に併せて手作りされるのである。少々お高いが、とてもいい記念品になると思う。

 宅配便の営業所を訪ねて、止め置きで送ってもらったベアを受け取った。
 ドキドキしながら梱包をあける。

 とてもかわいい仕上がりに大満足。
 このベアにしてよかった。

 家に帰ったベア達は、双子達のタンスの上に仲良く座っている。

 将来、二人がそれぞれのベアを抱き、「こんなにも小さかった自分」に思いをはせてくれることとだろう。

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